義理の親族間の貸し借りー口約束の問題点
離婚は夫婦関係の解消だけでなく、親族間の関係も解消することになります。その解消で問題となるのがお金の貸し借りです。 例えば、義理の父(妻の実父)が夫(義理の息子)に事業の運営資金・住宅資金・自動車購入資金などのためにお金を貸していた場合です。離婚の際に全額返してもらえれば問題はないのですが、そうでない場合は、借用書などを作成していない場合などが多く回収が困難な自体が引き起こります。
全く赤の他人間でお金の貸し借りをする際は、きちんと契約書を作成し、保証人や抵当権を設定するなどお金の回収の確保をはかりますが、親族間で書面を作成することなどは他人行儀でみずくさい感じがするので、単に口約束で済ます場合が多いと思います。親族や親しい友人・知人にお金を貸すときに書面を要求できない雰囲気がありますのでそれはやむを得ないことだと思います。
しかし夫婦が離婚してその親族関係が解消してしまえば義理の息子、義理の孫、義理の甥であった人とは少しずつ赤の他人と関係がかわりなくなっていきます。
離婚後に返済の請求をしても電話にでなかったり、借りたのではなくもらったものであるとの言い訳をしてくるかもしれません。
任意に返してもらえない場合裁判所に訴えて解決をしなければなりませんが、お金を貸したことがたとえ天地神明に真実であっても証拠がなければ訴えた方が負けとなります。元親戚の恩を忘れてごまかし、逃げた不誠実な人間の方が勝ってしまう事態が生じるのです。
義理の親族間の貸し借りー対策
親族の夫婦が離婚する際に契約書などの書類を作成したり、保証人を立ててもらったり、土地や建物に抵当権を設定してもらうようにすると良いです。これからは親族関係が解消し関係がかわるので心を鬼にして交渉するのが良いでしょう。金銭を分割払いにするときは公正証書にするのが良いです。
離婚後であっても交渉してまず書類を作成することが必要です。なぜならば、証拠がなければ裁判になったらほぼ勝てないからです。
きちんとした書類等を作成しておけば、後に不払いがあれば裁判所に証拠と提出して勝訴に導くことが可能です。また相手は不払いをすれば裁判所に訴えられたのち会社の給料が差し押さえられ、会社にもそのことが知られてしまうことを予見し、自ら積極的に弁済をすることを期待できます。
また土地建物に抵当権を設定しておけば、不払いがあれば裁判をすることなく、不動産の競売を申し立てることができます。相手がその不動産で商売をしているのでしたら、競売にかけられたことで信用を失うことになりやすいですので、自ら積極的に弁済をすることを期待できます。
義理の親族間の貸し借りー裁判所利用による方法
相手が約束通り任意に支払ってもらえない場合は、裁判所に訴えて債権を回収することも検討しなければなりません。
通常の訴訟では訴状などの書面を作成し証拠を用意しなければなりませんので専門性が高いです。本人でやるのに自信がない場合は、弁護士などの専門家に代理を依頼しなければなりません。
ただし、債権額があまり高額でない場合は訴訟で勝っても費用の方がむしろ高くついた事も起こりえます。
通常訴訟の他に支払督促や民事調停の方法もあります。
各種裁判 |
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通常訴訟 |
支払督促 |
民事調停 |
特徴 |
訴状等、書面が必要、法廷での口頭弁論手続きが必要 |
裁判所書記官に督促の申し立てをするだけで原則口頭弁論不要 |
調停員が関与し、相手側と自分で話し合いで解決 |
長所 |
判決により争いを確定できる。 |
支払督促を申し立てるときに証拠の提出は一切不要。どうしても証拠がない場合に賭けでやることができる。 |
比較的簡単な書類と契約書などの証拠を用意すれば面倒な手続きはあまりいらない。 |
短所 |
判決が確定してしまえば、不満があってもそれに従わなければならない。 |
支払い督促の申立の書類作成がやや難しい。支払い督促の申立てから1ケ月以内に相手から異議が出ると通常訴訟になり、証拠が必要 |
債権者と債務者が妥協して調停調書を作成できなければ問題が解決しない。 |
弁護士などの専門家を代理人としないで裁判で解決をするなら、民事調停の方法が比較的簡単です。しかし、契約書などの簡単な書類証拠の提出が必要です。
契約書などの証拠を用意できない場合は支払い督促の申立があります。ただし、債務者の相手が支払督促の申立から1ケ月以内に裁判所に異議を申し立てたら、通常の訴訟に移行します。通常の訴訟では証拠がなければ債権者(原告)は敗訴してしまいますから、十分な証拠を用意できないようであれば直ぐに、取り下げをしなければなりません。
義理の親族間の貸し借りー強制執行
裁判に勝ったり、公正証書を作成していたりしても相手が任意に支払ってもらえない場合は強制執行の申し立てをして相手の財産を差し押さえして換価することになります。
相手の財産には勤めている会社への給料債権、預貯金債権、株券、土地・建物などの不動産、自動車・パソコンなどの動産などがあります。
ただし、相手の勤めている会社や預金を預けている銀行名・支店名を特定できないとそれらに対して強制執行をすることはできません。相手が教えてくれないと自分で探偵を雇うなどして調べなければなりません。