養育費
未成年の子供に生活費や教育費を払うことです。離婚により親権を喪失した父にも養育費の負担義務はあります。
母子家庭で元夫から養育費を受け取っている割合 わずか20%
養育費の約束 口約束の危険性 書面の有用性
平成23年度全国母子世帯等調査結果報告(外部リンク)によると離婚後の養育費の取り決めをした夫婦の70.7%はその約束を文書にしていますが、27.7%の夫婦は文書にしていない口約束だけの取り決めとなっています(17養育費の状況2ページ参照)(外部リンク)。
離婚後の養育費の取り決めをしている夫婦が全体で37.7%でありながら現実に離婚後から現在に至るまで常時養育費を受け取っている母子家庭は19.7%にすぎません(17養育費の状況2ページ、7ページ参照)(外部リンク)。
これは口約束だけでは後で約束通り支払ってもらえない危険があることを物語っています。
口約束は証拠になりません(録音している場合は別)。書面での約束は立派な証拠になります。証拠があれば調停・訴訟・強制執行をスムーズに進めることができます。書面があれば相手は裁判沙汰になったら負けると思い観念し任意に払ってもらいやすくなります。夫の給料に対し強制執行をかけると会社にバレてしまいますので、世間体を気にする夫ならばそうならないように養育費をきちんと支払ってくれる容易なります。
養育費の相場
基本的には父と母の話し合いによって決めてよく、法律上いくらにしなければならないという決まりはありません。
ただし、調停や裁判を扱っている家庭裁判所では養育費の算定表(外部リンク)を基本に養育費の話し合いがされています。その算定表によると父・母の年収の比較、子供の年齢によって変わってきています。調停であっても父と母の合意があれば算定表と異なる額を定めることはできます。
養育費の算定表によれば会社員の夫の年収が400万円(控除前額、ボーナスは除外)で会社員の妻の年収が200万円(控除前額、ボーナス・児童扶養手当等は除外)だとした場合、夫が子供に支払うべき養育費は子供が1人の場合、0歳から14歳までは2〜4万円の範囲内で決めてくださいとしています。15歳から19歳までは4〜6万円の範囲内で決めてくださいとしています。
子供に習い事や学習塾に通わせようと思えば、決して多い額とはいえませんので、調停での話し合いがこじれた場合にせめてこれぐらいは払うべきとの最低基準を定めたものだと思われます。
家庭裁判所を利用せず協議離婚をする場合は養育費の算定表と異なる額を定めることができます。
平成23年度全国母子世帯等調査結果報告(外部リンク)によると母子世帯が父から受け取る養育費の月平均は子供1人の場合35438円、2人の場合50331円、3人の場合54357円、4人の場合96111円となっています(17養育費の状況12ページ参照)(外部リンク)。データーの総数が380世帯であり、現実の平均とはずれているかもしれませんが、養育費を受け取っていたとしても果たして十分な額といえるのか疑問があります。
養育費の一括払いと分割払い 公正証書活用のすすめ
離婚の際に養育費の約束をしても、離婚時に一括で全額を払う方はまずいません。月3万円計算で20年間払い続けると720万円になります。よっぽど財産に余裕がなければ経済的に無理があるからです。
ですから通常は月づき3万円ずつ月末払いにされています。しかしこの分割払いには問題があります。離婚後何年もの間確実に払ってもらえるかどうか不安になるからです。別居してお互いに再婚して新たに子供が生まれたり、転職・転勤等で住所が離れたり、元夫が大病や大怪我をして働けなくなる可能性もあります。
この問題点を少しでも改善するならば前述したように書面化が必要です。
さらに、金銭債務である養育費につき分割払いの約束をした場合にはそれを公正証書に記載するのをお勧めいたします。なぜならば夫が養育費を支払わなくなった場合、公正証書化しておけば調停・訴訟をして勝利しなくても、いきなり夫の給料・預金財産などに強制執行をして養育費を回収することができるようになるからです。
公正証書化する場合は公証人役場に手数料を支払わなければなりませんが、前述の不安を取り除いたり、調停・訴訟費用のことを考えれば決して高い手数料とはいえないと思います。一種の保険だと思ってよろしいかと思います。