その他の決め事
調停裁判管轄、引越・転職の際の通知義務、後で新たな請求しないことの義務付け、強制執行認諾文などがあります。これらの事項も離婚の際に書面にて合意文書や公正証書を作成することができます。
調停・裁判管轄
離婚後、元夫婦同士で争いが生じることがあり調停や裁判になることもあります。
しかし、調停や裁判はどこでもできるわけではなく、管轄が決まっており、通常は申し立てを受ける被申立人の住所地になることが多いです。その管轄では引越しして遠方になってしまった場合など不都合なことが多いです。調停で不満を言いたいのだけど家庭裁判所が遠くて交通費・宿泊費を払う余裕がない場合などです。離婚後もお互い近くに住んでいるから対策をしなくても大丈夫だと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、後に転職・再婚などで元夫・元妻が遠方へ引っ越してしまう可能性があります。
予め当事者間での書面による合意(公正証書化)によって管轄を他の場所にすることができます。
通知義務
引越し、電話番号・メールアドレスの変更、転職等があった場合に相手に知らせることを義務付けします。
面会交流や不払いがあったときに催促請求するときに現在の情報が重要になります。強制執行をする際には会社名が非常に大切な情報になります。
後で請求しない事の確認
離婚の際に決めたこと以外は後に請求しないことを約束することです。後でやっぱり請求すると主張されてはお互いに気まずい思いをすることになりますので、書いたほうがよろしいと思います。強制執行認諾をする代わりにこれ以外請求しないでということで対になっています。
強制執行認諾文
債務不履行があった場合に直ちに強制執行ができるように合意文書を記載することです。
ただし、金銭的給付に限ります。
この強制執行認諾文が公正証書に記載されれば事前に勝訴判決を得たのとほぼ同じことになります。すなわち不払いが一回でもあれば裁判をしなくてもいきなり強制執行をかけられることになります。
もし、強制執行認諾文付の公正証書を作成していなくて、相手が養育費の不払いをしていた場合、まず家庭裁判所に調停の申し立てをすることになります。さらに調停で話し合いがまとまらず、不調に終わった場合は家庭裁判所に訴訟を起こさなければなりません。判決で養育費の請求が認められた場合に初めて強制執行ができるのです。時間や費用のことを考えて泣き寝入りしかねません。
その上例え養育費の請求は認められても判決で認められた額で我慢しなければなりません。一旦判決が下されると、認容額に不満があっても基本的には覆ません。離婚のときに夫婦での話し合いをしておけば相手の同意があれば希望の額を養育費とすることができたのです。
従って離婚する際に養育費や慰謝料などの金銭的給付を分割払いなどで後払いにする場合には、書面(公正証書)を作成しておくことをお勧めします。